虫歯・歯周病予防で笑顔を守る:予防歯科のいろは

彩り豊かな人生を送るための口腔ケア(デンタルケア)ブログ

虫歯予防Tips:効果的なノウハウ

今日は虫歯予防の最後です。

細かい虫歯予防Tipsをお届けします。

ここまで虫歯リスクを下げる方法TOP3は
以下だとお話してきました。

第1位:糖分の摂取頻度を減らす
第2位:フッ化物応用
第3位:ブラッシング+デンタルフロス

これら以外にも虫歯予防でよく聞く
ノウハウや成分があります。

それらの効果効能はどうなのか?を
一通りまとめてみます。

フィッシャーシーラント

フィッシャーシーラントはフッ素と並び、
国際的にトップクラスで虫歯予防効果が
高いと認められている手法です。

万人にとって100%間違いなく効果を期待できるのは、
フッ化物応用とシーラントの2つということです。


シーラントは何かと言うと、
いままでの記事で解説してきたように、
奥歯には『裂溝』という歯の溝があります。

ここは歯ブラシでは磨けないので、
プラークを除去できません。

よっていくら丁寧にブラッシングをしても、
糖分を摂取すれば虫歯になるのです。

シーラントは、この裂溝を埋める治療です。

さらに、その材質にフッ素を添加することで、
虫歯予防効果を底上げします。

このシーラントをしておけば、
あとはブラッシングだけで理論上、
虫歯をなくせるのです。

よって虫歯リスクの高い方は検討してみてください。


ただし原則、自費診療となってしまいます。

小児歯科では、むし歯になりやすい一部の歯に対し、
フィッシャーシーラントが保険適用となる場合がありますが、
歯科医院や地域、お子さんの年齢などによって異なりますし、
大人はまず保険適用とはなりません。

自費の場合、歯1本につき数千円~1万円が相場です。

私はシーラントはやっていませんが、
虫歯リスクの非常に高い方は、
選択肢としておすすめできます。

キシリトール

キシリトールも虫歯予防の有名な成分です。

キシリトールガムがコンビニやスーパーでも
販売されていますし、キシリトール入りの
歯磨き粉もあります。

この効果は何かと言うと、以下2つです。

1.ガムを噛むことで唾液が循環する
2.キシリトールに虫歯菌の弱体化効果がある


まず唾液の循環について。

唾液は「予防歯科のいろは」の
最初
でお伝えしたように、
虫歯、歯周病、口臭、知覚過敏
をすべて防ぐ万能薬です。

そして、物を噛めば唾液が分泌されるため、
キシリトールガムを食べることにより、
再石灰化を促せます。

(そのため食後に噛むのがおすすめ)


一方、2つめに挙げた虫歯菌の弱体化は
疑問が残ります。

巷で言われている理論として、
砂糖などの糖分はミュータンス菌の
エサになります。

そしてキシリトールも糖質の一種なため、
同じくミュータンス菌が食べようとします。

しかしキシリトールは特殊な構造をしており、
ミュータンス菌のエネルギーにならないので、
酸が生成されないのです。

ミュータンス菌からすれば、
「エネルギーを補給しているはずなのに
全然エネルギーにならない」となるため、
徐々に弱体化していきます。

要は、人間がゼロカロリーの物を食べ続ければ、
緩やかに衰弱していくのと同じです。

(そう考えると怖いですね笑)


ただし、この理論はさまざまな
研究により疑われています。

現状のエビデンスから言うなら、
キシリトールは他の糖分と違って、
ミュータンス菌のエサにならないだけ
という見方が、おそらく正確です。

ミュータンス菌を弱体化させたり、
阻害する効果があるかは疑わしいと言えます。

つまり…

誤)
砂糖=ミュータンス菌のエサになる
キシリトールミュータンス菌を弱体化させる

正)
砂糖=ミュータンス菌のエサになる
キシリトールミュータンス菌のエサにならない

よってキシリトール自体に、
虫歯リスクを下げる効果はありません。

ミュータンス菌のエサにならないので、
砂糖よりは遥かにいいですし、いまの
砂糖をすべてキシリトールに置き換えたら、
虫歯リスクは激減します。

が、それは「砂糖を摂取しなくなったおかげ」です。

したがってガムの場合、キシリトールでない
ノンシュガーガムでも同じ効果を得られる、
と考えられます。


仮にキシリトールには効果がある
というエビデンスを信用するとしても、
費用対効果がとても悪いのです。

まず、キシリトールによるミュータンス菌の
弱体化には、時間がかかります。

・毎日摂取し続け、3ヶ月で少しマシになる
・2年で口内環境が大きく改善される

というレベルです。

 

しかもその間、1日5gのキシリトール
摂取しないといけません。

コンビニや薬局に置いてある市販のガムだと1日10粒、
配合量が多い歯科専用キシリトールガムだと、
1日3~4粒は食べる必要があります。

費用も時間も大きく掛かるのです。

 

結論として、唾液により再石灰化が多少速まるので
ガムが好きな方なら止めませんが、これなら
フッ化物応用だけしておけば十分と思います。

CPP-ACP

CPP-ACP入りのガムや歯磨き粉をたまに見ます。

これはミネラル補給を目的とした製品です。

ミュータンス菌が酸を生成すると、
歯からリン酸カルシウムが溶け出す
という話を以前の記事で話しました。

それを補給してくれるのがCPP-ACPです。

この効果は、さまざまな実験で証明されています。

が、注意しなければならないのは、
フッ素とセットでないと効果が
ほとんどないということです。

つまり、CPP-ACP単体では無意味です。

フッ素を塗布したあとなら、
再石灰化を促す多少の効果を期待できます。

とは言え、そこまでやっても効果は低いです。

しかもCPP-ACP入りの歯磨き粉となると高い上に、
フッ素配合の歯磨き粉と別々で使うので、
とても手間がかかります。

よって私は取り入れていません。

ハイドロキシアパタイト

ハイドロキシアパタイト配合の歯磨き粉もよく見ます。

ハイドロキシアパタイトはエナメル質の主成分。

その一部がリン酸カルシウムとなっています。

そんなハイドロキシアパタイト
期待されている効果は、
虫歯予防+ホワイトニングです。

 

虫歯予防については、
リン酸カルシウムを補給することで、
再石灰化を促すというもの。

一方でホワイトニングは、
ハイドロキシアパタイトが汚れを吸着することで、
着色を取ってくれると考えられています。

また、一部の歯磨き粉には薬効成分がアップした
薬用ハイドロキシアパタイトも使われています。


これらはエビデンスもあり、
おそらく有効であると考えられます。

が、フッ素と違って歯質強化までは起こせません。

よってハイドロキシアパタイトを重視するなら、
フッ素+ホワイトニング成分のある歯磨き粉のほうが
虫歯予防にはいいですし、価格も安めです。

殺菌成分(LSS、IPMP、CPCなど)

最後に、歯磨き粉の多くには
殺菌成分が配合されています。

多くは歯周病や口臭向けなのですが、
「虫歯予防にも殺菌成分は有効か?」
という疑問が出てくると思います。

これについて結論を言うと、
殺菌成分は虫歯菌にある程度作用します。

特に、口臭対策として知られる
LSS(ラウロイルサルコシンナトリウム)
ミュータンス菌にも効果的です。

 

ただし、そこまで強い効果はありません。

あくまで虫歯予防の補助(サブ)

数を減らしたり動きを抑制するだけです。

ミュータンス菌を全滅させたり、
虫歯を完璧に予防はできません。

 

医学的には細菌を全滅させることを
「滅菌」と言うのですがそのためには、

135℃の熱湯で30分煮沸
炎で燃やす
過酸化水素ガスを使う

といった処置が必要です。

口内でやったらヤバいことになります(笑)

 

他にもIPMPやCPCといった殺菌成分が
歯磨き粉にはよく使われており、それらもある程度、
ミュータンス菌に作用することが分かっています。

しかし、あくまで細菌の数を減らしたり、
動きを鈍らせるだけです。

絶対に虫歯を防ぐ万能薬ではないので、
サブとして活用しましょう。

虫歯予防成分まとめ

虫歯特集はここまでです。

もう一度貼りますが、
虫歯予防は以下の3つです。

第1位:糖分の摂取頻度を減らす
第2位:フッ化物応用
第3位:ブラッシング+デンタルフロス

その他、キシリトールガムや殺菌成分などは
オマケと考えておきましょう。

(シーラントのみ、予算があるならオススメできます)

 

次回から、第二の口腔トラブルである
歯周病について特集します。

虫歯と並ぶ国民病である歯周病

その原理、予防法を細かく解説するので、
楽しみにお待ちください。