虫歯・歯周病予防で笑顔を守る:予防歯科のいろは

彩り豊かな人生を送るための口腔ケア(デンタルケア)ブログ

虫歯予防の最重要テクニックとステファンカーブ

前回、虫歯予防の原理を解説しました。

糖分を摂取すると脱灰と再石灰化によって、
歯が溶けたり再生したりする…
というお話でしたね。

 

通常なら、脱灰で歯が溶けても再石灰化
回復するため、元の状態に戻れます。

しかし、再石灰化が間に合わなくなると
「歯が溶けるスピード」のほうが速くなり、
いずれ穴が開いてしまうのです。

これを虫歯(齲蝕、う蝕)と言います。

 

では再石灰化が間に合わなくなるとは、
どういう状態なのでしょうか?

これについて有名な
ステファンカーブという話があります。

ステファンカーブとは、
歯の脱灰と再石灰化のペースを
グラフ化したものです。

 

このカーブを理解するために、
まずpHバランスについて解説します。

pHバランスとは?

pHとは「水素イオン濃度指数」を指しています。

簡単に言うと濃度が低ければ酸性、
高ければアルカリ性ということです。

 

この酸性・アルカリ性は0~14で表され、
7が中性、そこから0に近づくほど酸性、
14に近づくほどアルカリ性となります。

 

一例を挙げると…

レモン:pH2(酸性)
りんご:pH3(酸性)
人間の肌:pH4.5~6.0(弱酸性)
水:pH7(中性)
せっけん:pH10(アルカリ性
台所用洗剤:pH12~13(アルカリ性

などです。

pHの数字によって、物の
酸性・中性・アルカリ性
を表しています。

歯のpH

私たちの歯は、普段pH7の中性です。

しかしミュータンス菌が酸を生成すると、
一気にpH4という酸性に傾きます。

この状態だと歯は溶けているのです。

 

そこから唾液により中和され、
15分前後で歯が溶けないラインまで戻ります。

このときは約pH5.5の弱酸性です。

さらに15分(合計30分)ほどで
pH7の中性まで戻ります。

 

ただしpHが7に戻っても、
再石灰化は完全に終わっていません。

30分では歯の表面だけが修復されただけです。

完全な回復には平均2時間ほどかかります。

 

つまり酸によるダメージは
2時間あれば自然治癒するわけです。

こうした脱灰から再石灰化までの、
pHのラインがステファンカーブと呼ばれます。

知られざる真の虫歯の原因

通常、正しくこの再石灰化が行われれば、
虫歯は発症しません。

しかし問題は、再石灰化が行われる前に
新しく糖質が入ってきた場合です。

すると絶えず酸が作られ続け、
歯が脱灰し続けるので、
再石灰化が間に合いません。

歯が修復される前に、
また酸で溶かされてしまうのです。

それが繰り返されると、エナメル質に穴が開きます。

これが虫歯です。

 

つまり虫歯の原因とは、

糖質の摂取回数が多過ぎる
糖質の摂取時間が長過ぎる

なんです。

間食やジュース、加糖のコーヒーや紅茶などで
頻繁に糖分を摂取すると虫歯になります。

また、晩酌したりお菓子を「だらだら食い」するなどの、
長時間の食事でも虫歯リスクは格段に高まります。

特にエナジードリンク、スポーツドリンク、
お酒などが虫歯の原因となっている
ケースは多いでしょう。

 

逆に「食事は1日1~3食で、食間は水や麦茶など
無糖のものしか飲みません」という人は、
ほぼ確実に虫歯にかかりません。


極論、断食すれば絶対虫歯にならないのです。

さらに極論すると、歯磨きを一切やらなくても
糖分さえ入れなければ虫歯になりません。


よって虫歯予防のために
見直すべきは、食事回数です。

(この食事には、糖分を含む飲み物も該当します)

ここを見直す前に、どれだけ歯磨きやフロス、
マウスウォッシュなどを頑張っても、
虫歯はほとんど減りません。


そのため今回のポイントとして、

  1. 歯が脱灰して再石灰化するまでのグラフがステファンカーブ
  2. 糖質の摂取回数が少なければ、虫歯にはならない
  3. 回数が多かったり、時間が長ければ、虫歯になる

と覚えておいてください。

虫歯にならない食べ物はある?

なお、糖質のお話をすると、

「この食べ物はどうですか?」
「○○も虫歯になりますか?」

といったご質問がよく寄せられます。

結論として、どんな食材であれほとんどが虫歯になります。

いま存在する、ほぼすべての食材には
糖質が含まれているためです。

穀物や果物はもちろん、
野菜や海藻、きのこ類でも、
虫歯にはなります。

 

ごく一部、虫歯にならない糖質もあります。

キシリトールや、厳密には糖質と
言いませんが人工甘味料など)

が、ほとんどの食材は虫歯になると
覚えておきましょう。


そしてこういう話をすると、
「糖質が問題ということは、歯磨きは無駄なの?」
「虫歯予防の歯磨き粉は効果がないの?」
といった疑問が出てくるかもしれません。

そこで次回から、歯磨きやフッ素など
一般的に虫歯予防に効果的と
言われているものについて、
1つずつ解説していきます。